レベッカ
シアタークリエ×涼風真世×山口祐一郎、貴婦人の訪問(貴婦人の訪問 - CoffeeAndBooks's 読書日記)を思い出す。チケットを取ったのは、もちろん涼風真世がダンヴァース夫人を演じる回。しかし、保坂知寿のダンヴァース夫人も見たかった・・・全く違う魅力があったはず。
涼風真世はさすがの歌、貫禄。男役的な声とも違う低音が素晴らしい。盛り上がるところでも急な裏声がないのがすごい。そして、狂気を感じさせるレベッカへの愛情を見せるダンヴァース夫人を涼風真世が演じると、最後まで顔の見えないレベッカの姿も涼風真世で想像してしまい、ますます妖しい愛憎を感じてしまう。ダンヴァース夫人は、レベッカに自分を投影してうっとりしていたのかもしれない。レベッカを誇らしく陶然としていたら、急死。これはひどい喪失感を与えるはず。そして、レベッカの夫はレベッカとは比較にならないような女の子を後釜に迎えようとしている状況は許しがたいものだろう。でも、その死の真相は、ダンヴァース夫人にとってある意味ひどく残酷。ただ、ちょっと火事のシーンに続く感情の変化がわかりにくかった。もっと、じめっとした終わり方をすると思っていたので、余計にかも。でも、全体を通じた満足感は高め。
ちなみに、「わたし」は桜井玲香の回だった。声がとてもきれい。見た目も可憐だし、やや小柄なので元男役の涼風真世と並ぶと余計にかわいらしさが際立つ。でも、実はこの手の女の子が、芯は強くて一番コワイタイプだったりする。そのあたりの伝わり方がいい感じ。
ビジネスファッションルール 武器としての服装術
ファッションについては人から注意を受ける機会が少なく、特に女性の場合は自由度が高いと思っている人も多いので、余計に難しい。また、日本ではあまり職業に応じた服装という意識が不足しているところがあるかもしれない。たとえば、日本版は少し見ただけだけど、同じ弁護士を主役に据えても、米国ドラマの"Good wife"と日本版の"Good wife"を比較すると、日本版はかなり甘めに見えた。
ただ、許容されるとしても、甘めのファッションはやっぱり女性を「女の子」に見せてしまうことがあるので、注意が必要。オフィスで話しかけやすい雰囲気を醸し出すべき職種と、タフな交渉の前面に出す職種では服装が違う。部下よりも安っぽい服を着た上司は尊敬されないかもしれない。この『ビジネスファッションルール 武器としての服装術』は、トレンドを理解するためのファッション雑誌から、どうやって取捨選択するか、の視点を養うのに役立ちそうな一冊。さすが、キャリア志向の女性向けの書籍を多く発行する出版社。
働く女性が知っておくべき ビジネスファッションルール (最高の自分を演出する)
- 作者: 大森ひとみ
- 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
- 発売日: 2017/03/24
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大奥
奇病が元で男性の数が激減した江戸時代の日本を舞台とする、時代物のSF。Kindle Unlimitedで1巻~3巻が無料で読めるので、ついついダウンロードしたら続きが気になって一気に全巻購入・読破してしまった。
男性が激減したことで、江戸幕府は女性が将軍になり、男性が集められ大奥に入ることに。家光から始まる男女逆転の江戸幕府は、設定は荒唐無稽であるけれど、実際の歴史上の人物や出来事も巧妙に取り入れつつ、破綻なし。完全にヒールの治済を除けば、それぞれの人物が魅力的であり、いろいろな苦悩も頷けるものであり、ついつい引き込まれる。
制度の導入期の男性の苦難はバリバリ働いてきた女性が家庭のためスローダウンする際の悩みに似ていたり、性的暴力により黙らせようとする敵と相対する平賀源内の姿は女性が何かをするときについ慎重になる背景なのかなと思ったり。そして、姑の奸計で子を奪われた正室と側室が結託したことによって女性不信になる家斉もなんだか社内政治で見る光景みたいだな、とも思う。
まだまだ続くようで、続きが楽しみ。これはやっぱり大政奉還を機に終焉を迎えるのだろうか。早く完結するところが読みたいけれど、もっと長く楽しみたい。
天智と天武
壬申の乱を題材にした小説や漫画は多いけれど、蘇我入鹿が意外な人物に結びついていく『天智と天武』は初めて触れる歴史解釈かもしれない。史実といっても限定的な情報、それも実際の出来事が起きた直後の権力者によって残される情報に過ぎないので、いろいろな解釈が可能。特に、敵も味方も身内のこの時代、日本書紀編纂時の権力者とその周辺にとって、多方面に気を使ったせいで一部に矛盾や不詳が出てくることもあるのだろう。
一般的には父母が同じとされる天智天皇と天武天皇であるけれど、この作品では異父兄弟として描かれる。特に天武天皇は謎の多い人物らしく、某国の王族という説や天智天皇とは順番が逆(天武天皇が兄)という説など、いろいろな説があるけれど、この作品では蘇我入鹿を父とし、中大兄皇子を父の敵として見ている立場。そして、中臣鎌足が生まれる背景も、当時の国際情勢を反映したものとなっており、非常に興味深い。朝鮮出兵もこれにより、とても複雑なものに。
また、この作品は、敵味方の間に男性同士の恋愛感情を織り交ぜてきている点も新しいかもしれない。『天上の虹』でも一瞬、大海人皇子と柿本人麻呂だったかのそれらしい関係が描かれていたけれど、そちらは、あまり本筋には影響しないところだったと記憶している。『天智と天武』はどちらかというと、その感情が様々な出来事の背景になっている。実際に当時の恋愛事情がどうなのか、私にはその知識がないけれど、ただ、戦国時代の武将同士の関係にしても、任侠映画の世界にしても、誰かのために命を懸けるという関係性を成り立たせる感情というのは、少し不合理なところがあって、性的なものであるかどうかは別にすると恋愛感情に近いのかもしれない。自分より優れた相手に対する嫉妬で人を殺すという感情は共感できなくても、手に入らない相手を自分のものにしたくて、という感情は少しわかるような気もするし。
幻の女
翻訳の例として挙げられることも多い書き出し”The night was young, and so was he. But the night was sweet, and he was sour.” (夜は若く、彼も若かった。が、夜の空気は甘いのに、彼の気分は苦かった。)はよく覚えているし、結末に驚いた記憶はあるのに、細部が思い出しにくい古典的名作。思い出して再読。
派手な目立つ女性をナンパして食事と劇場に行ったところ、帰宅すると妻が殺されている。第一発見者となってしまった主人公は容疑者候補としては最有力。どうにもアリバイを証明できず、遠路はるばるやってきた親友がにわか探偵としてアリバイの証明に尽力するが、なかなかアリバイの証明となる女性が見つけられない。親友は必死に探し、ついには糸口をつかむかに見えるけれど・・・。
最後に発覚する真相が意外過ぎて驚くものの、よく考えるとミステリーのお作法通りでもある。さすが、読み続けられる古典はよくできている。
そして、古い時代の外国が舞台なのに、情景が浮かんでくる描写の素晴らしさ。記述は落ち着いたものである一方、段々と時間がなくなってくる焦りのようなものも伝わってくるリズム。新訳を読んだけど、これは翻訳もよいのだろうと思う。
接待の一流 おもてなしは技術です
デート編はさておき(バブル後の世代にはちょっとおなか一杯)、ホストとお店の関係を明確にしたうえで、もてなしの在り方を説く一冊。さすがにお店選びで「初めて来るんです」というような失敗は見たことがないけれど、ゲストにワインリストを渡す、は結構する人が多く当惑させられることが多いので、「ゲストに好きなワインを選ばせてあげる方が喜ばれるだろう」「ゲストが詳しいから下手なワインを選びたくないので選ばせるほうが良い」と思う人は是非とも読むべき一冊。
できれば、もてなしの場において、ワインのテイスティングを誰がするべきか、についても触れておいてほしかったかも(見落としでなければ)。これも当惑させられることの度々ある事象のひとつ。
一流コンサルティング会社の秘書室が厳選 接待で使う銀座の名店100
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カジュアルなお店を使う接待も基本の考え方は同じだけど、代わりに確立されたお店がないためお店選びの苦労があったり、お店の人との打合せも少し様相が違うところがあったり。このあたりは、『マンガ・黄金の接待』が参考になる。
とある新人漫画家に、本当に起こったコワイ話
お正月休み、Kindle Unmilitedで読めたので興味本位でダウンロードしたところ、驚きの世界にページをめくるのが止まらず、そのまま読み終えてしまった。著者はウェブを経由して仕事が始まった新人漫画家ということで、おそらく若くて、社会経験もそれほど豊富ではない様子。ただ、すごく責任感がある人で、テキパキした感じが見て取れる。そのせいで、おかしな編集者に翻弄されても自己犠牲で乗り切ろうとしてみたり、少しエキセントリックな対応を編集者以外の他社にしてしまったり、かなりの苦労をする。
ベテランの有名な漫画家も編集者に起因するトラブルは枚挙にいとまがないわけで、特殊な世界ではあるのかもしれないけれど、この著者は社会人経験があるおかげか、少なくとも契約や法律という知識があることで救われているようにみえた。高校生なんかだと完全に搾取されそう。特に、漫画に限らず出版の世界は、私の乏しい経験では、お金に関することを曖昧にしたままで何かが始まることの多い世界という印象が強い。デジタルに料金表が作れる世界ではないけれど、神秘のベールのせいで不当な扱いを受けている人もいそうだ。
生業としての小説家戦略 専業作家として一生食っていくための「稼げる」マニュアル54 (スマートブックス)
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