CoffeeAndBooks's 読書日記

日々の読書を記録しています

やさしいダンテ<神曲>

 欧州的な思考を理解するには必要な知識、教養とは言われるものの、いきなり手を付けると前提として要求される知識、教養も生半可でない超大作である『神曲』。少し仕事に余裕ができてきたので少しずつ読もうかなと思うけれど、難解な部分も多いので、まずは予習のために読んだ一冊。やっぱり、登場人物を紹介してもらえるのは大きいです。その人が歴史上どんな人物で、ダンテとどんな関係の人物なのか。平易な文章で日本人には少し馴染みのない冬至の社会的背景も知識を得られるので、予習としてはとても有用。

 キリスト教世界の地獄のイメージは『神曲』だと言われるけれど、こうして見ると地獄や天国のイメージというのは宗教を問わないところも多いなという印象。でも、生まれ変わって修行という概念がないから煉獄で浄化されるという感じなのか。この辺りは解説書だけでなく本編を読んで理解を深めたいところ。

神曲 ─まんがで読破─

神曲 ─まんがで読破─

 
神曲(全)

神曲(全)

 

 

壊れたおねえさんは、好きですか

 当初はメンタルを病んだ女性が魅力的に見える、のような話かと思っていたら、似たような話も登場するもののほんの一部。どちらかというと、美人でない女性から発せられるフェロモンに関することが中心。

 市原悦子には劣情をもよおしても泉ピン子にはない、というのがちょっと面白かった。分析内容には完全同委ではないけれど、分かるような気はする。『「魔性の女」に美女はいない』(「魔性の女」に美女はいない - CoffeeAndBooks's 読書日記)に通ずるものを感じる。

 それから、肌色の下着がのぞくのがセクシーかどうか、あとがきで本人は振り返るとサンプルが少なかったことから否定的になっていたけれど、面白い視点だと思う。実際に該当するような人を見たことがないからわからないけど、だらしない女性って少し性的に見える、というのはあるように思う。

 

  

Kindle Paperwhite Wi-Fi、ブラック

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「ココロ」の経済学:行動経済学から読み解く人間の不思議

 人間は必ずしも合理的ではない。効用というのも不思議なもので、効用が本人にとって高いから価格が高くても買うことがあるといっても、効用は測れない。たとえば、リンゴとミカンのどちらを買うか、予算的にどちらかしか買えない場合を除いては、価格でなく効用が選択に影響する。とはいえ、リンゴとミカンの効用は栄養価なのか、健康への効果(これも曖昧)なのか、味(好み)なのか、よく分からない世界だ。

 今回、さらに「ココロ」の不思議さを感じたのは、「内的動機」というもの。ここで紹介されているのは、『夢中になっているサルに褒美を与えると、サルのパズルの回答率が下がる』、そして『人間の場合も、金銭的報酬を与えると、パズルの正答率が下がる同じ現象が起こる』ということ。好きでやっているうちは打ち込めるのに、報酬が与えられると打ち込めなくなるのだろうか。

 オランダのトイレでハエの絵を描いたら使い方が向上したとか、この「ココロ」の癖を分析すると人の行動を変える効果も得られるらしい。やり方次第でコストをかけずに高い効果が得られるというのは魅力的だけど、人の行動とそこに影響を与える事象を分析するというのは難しそう。とりあえず興味深いネタが沢山散りばめられていて全編おもしろかったのだけど、使いこなすというのは別の世界なんだろう。

「ココロ」の経済学: 行動経済学から読み解く人間のふしぎ (ちくま新書1228)

「ココロ」の経済学: 行動経済学から読み解く人間のふしぎ (ちくま新書1228)

 

 

9割の人間は行動経済学のカモである ―非合理な心をつかみ、合理的に顧客を動かす

9割の人間は行動経済学のカモである ―非合理な心をつかみ、合理的に顧客を動かす

 

 

アイヒマンを追え!ナチスがもっとも畏れた男/The People vs. Fritz Bauer

eichmann-vs-bauer.com

 本作は、第二次世界大戦後の戦争犯罪者に関する捜査を主導する検事長フリッツ・バウアーがスポットライトを浴びる。正義のため、信念のため、捜査を止めようとする組織に屈することなく身柄を確保し、裁判を行うために動き続ける。単純に復讐のためではないので、心情としては共感するものの、自分に同じようなことができるかというと難しいかもしれないと思ってしまった。そして、友人が戦争犯罪者であって、自分に権力があった場合に、自分がどのように振舞うかということを考えると、フリッツ・バウアーを妨害する立場の心情も少しわかる。特に、具体的な自分の周りの人を想像してしまうと。だから、"the Banality of Evil" (悪の凡庸さ)という話になるのだろうけど。

 

 第二次世界大戦を総括する映画がここのところ多い印象だけど、戦時中のものに比べて戦後処理(アウシュビッツ裁判関係)を立て続けに観ているような気がする。戦争犯罪者を追求しようとする若い検察官を主人公に、戦争犯罪者の実態が実は平凡な市民で、誰もが犯罪者になり得る可能性を描いた『顔のないヒトラーたち』顔のないヒトラーたち/Labyrinth of Lies - CoffeeAndBooks's 読書日記アイヒマンが逮捕され、開廷される歴史的な裁判を世界に配信するチームに焦点を当てた『アイヒマン・ショー』アイヒマン・ショー 歴史を映した男たち/The Eichmann Show - CoffeeAndBooks's 読書日記。収容所に収容されていたユダヤ人女性の再生の物語である『フェニックス』あの日のように抱きしめて/the phoenix - CoffeeAndBooks's 読書日記

 それから、第二次世界大戦を扱う映画のうち、ドイツに関連するものは同性愛についても触れていることが増えているような気がする。本作でも、フリッツ・バウアーと部下がそれを理由に失脚させられようとしたり、脅迫されたり。『手紙は憶えている手紙は憶えている/REMEMBER - CoffeeAndBooks's 読書日記でも、同性愛を理由に収容所に収容されていた人が登場していた。やっぱり、昨今の多様性への認識が高まったことによるものなのだろうか。

 

 

 

フリッツ・バウアー アイヒマンを追いつめた検事総長

フリッツ・バウアー アイヒマンを追いつめた検事総長

 

 

日本電産永守重信社長からのファックス42枚

 当たり前のことをやる、この大切さ。よくPEファンドの人たちと話すと出てくるのが、技術力はあるのに、営業面で当たり前のことができない会社が多いということ。依頼に対して、信頼や実績がないうちは速さで勝負するのもひとつ。市場価格を前提に価格を下げる努力も同様。50社以上のM&Aですべて1年以内に黒字化するというのは、ものすごいことだけど、当たり前を追求すればこんなすごいことが実現できる。

 本書では、とにかくやるべきこと、考える前提にするべきこと、というのが紹介されている。ちょっとだけ在籍した人が見聞きした例ではなく、経営側の立場で参画されていた方が厳選した永守氏の哲学だけに参考になる。動く、考える、(他人ではなく)自分に不満を持つ。誰にも等しく与えられている資産である時間を最大限に有効に使う。スピードを追求する。どれも、本人のコミットメントだけでできること。経営者だけに必要な心構えではなくて、一社員も使える心構え。

 ちょっとタイトルがインチキ自己啓発風なのが残念ではあるけれど。

日本電産永守重信社長からのファクス42枚

日本電産永守重信社長からのファクス42枚

 
「人を動かす人」になれ!―すぐやる、必ずやる、出来るまでやる

「人を動かす人」になれ!―すぐやる、必ずやる、出来るまでやる

 

 

ルポ 児童相談所:一時保護所から考える子ども支援

 私個人も児童養護施設に暮らす子どもへの支援ボランティアに参加しているので、とても関心の高い領域ではあるけれど、児童相談所については考えたことがなかったので衝撃を受けた。児童養護施設で暮らす子どもは、将来施設の職員になりたいと言う子が多くいるのに、児童相談所で働きたいという子どもはいない。多くの子どもが二度と帰りたくないと言うらしい。

 とはいえ、相談所で働く職員が悪い人間ということではない。業務量も増加し続け、日々、何とかオペレーションをこなすしかなく、そのためには子どもの気持ちに寄り添う努力をするよりも問題を起こさないでやり過ごしたいという気持ちになることはよくわかる。悲しいことではあるけれど。生活保護ケースワーカーは一人当たりの件数が決まっているというのに、児童養護にはないというのも衝撃。

 背景として、問題のある家庭が増えた又は顕在化しやすくなったということで、ケース数自体の増加もあるけれど、相談所での滞留日数の増加もあるらしい。これを減少させる取組に成功している自治体もあるようなので、うまく横展開されてほしい。

 

ルポ 児童相談所: 一時保護所から考える子ども支援 (ちくま新書1233)

ルポ 児童相談所: 一時保護所から考える子ども支援 (ちくま新書1233)

 
働きながら、社会を変える。――ビジネスパーソン「子どもの貧困」に挑む

働きながら、社会を変える。――ビジネスパーソン「子どもの貧困」に挑む

 
走れ! 児童相談所 発達障害、児童虐待、非行と向き合う、新人所員の成長物語

走れ! 児童相談所 発達障害、児童虐待、非行と向き合う、新人所員の成長物語

 

 

マンガでわかる リアル中国人

 近くて遠い国、中国。個人的には、中国人は日本人に見た目も似ているし、漢字を使って箸を使うなど共通点も多いのに、やっぱり考え方が違う、ということで、西洋人と分かり合えないときよりも残念な気持ちが強くなって、妙な距離を感じてしまうように思う。たとえば、この『マンガでわかる リアル中国人』で書かれている例だと、縁起を担いだり、縁起物に喜んだりという行動様式は似ているけれど、何を縁起が良いと思うかは違う。それから、手で数字を表すサインも途中まで日本と同じなのに、途中から違う。

 このマンガでは、旅行者である中国人と日本に在住の中国人、そして日本人が交流しながら文化の差異を紹介する形式で、とても面白い。でも、違いを認識せずにいきなり接触すると、勘違いしてイライラしてしまうことも多いのかもしれないと反省。違う文化と考え方を持つ人たちであることを認識して、比較を楽しみたいところ。

 なお、本書は簡単な会話がピンインと一緒に紹介されているので、これだけで中国語の勉強にはならないけれど、同僚や友人に一言でも話しかけたいときや自分が観光地でお店でもやっていたら役立ちそう。

マンガでわかる リアル中国人

マンガでわかる リアル中国人

 

  

  

PR視点のインバウンド戦略?訪日中国人の興味は「爆買い」から「体験」、「都市」から「地方」へ

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